柔道整復

「整骨の道にある者、この道を志す者、斉しく現状を直視し、温故知新の精神を以て斯道の歴史を顧み、将 来の資とせねばならない」
社団法人 日本柔道整復師会 整復医学委員会編「整骨学」より(昭和60年第3刷)


●柔道整復の歴史

日頃接骨院・整骨院の先生と呼ばれている私たちですが、正式な資格名称を柔道整復師といい、行われる施術を柔道整復術といいます。医療の一端を担う国家資格で、その業務は柔道整復師法によって規定されています。

歴史的には江戸時代、接骨術・整骨術として大いに栄えていました。当院も名倉堂を名乗っていますが、江戸時代の明和年間(1764~1772)、ちょうど第十代将軍・家治の頃でしょうか、千住において名倉直賢によって名倉流一派が創始されています。

その後明治維新に伴い政府が西洋医学を採用したことにより、接骨・整骨は廃止の憂き目にあいます。しかし接骨・整骨は古くは柔術と、明治になってからは柔道と密接な関係にあったことから、大正時代になって新たに柔道整復の名の下で復活を遂げることになりました。柔道整復には古くから受け継がれてきている技術・伝統があり、現代においては当然最新医学の知見も取り入れ、様々な講習・研究によって研鑽を重ね今日に至っています。2001年にはWHO(世界保健機構)において日本の伝統医療、judo therapyとして報告書に記載され世界的にも知られるようになりました。

●柔道整復の業務

柔道整復術は、骨・関節・筋・腱・靭帯など運動器の損傷に対して手術や投薬を行わず、損傷の評価、整復、固定、後療法、指導管理を適切に行い、人の自然治癒力を最大限に生かし、負傷部の早期回復を目指す施術法のことをいいます。

整復は損傷部を解剖学的に正しい位置に整えることをいい、損傷部によけいな力がかからず治癒過程が正常に進むよう一定期間固定することで安静を保ちます。後療法には電気や温熱を加える物理療法や、手で患部や周辺関連部位に施す手技療法、弱くなった筋肉や動きの悪くなった関節に対して行う運動療法などがあります。回復の程度に合わせ、これらの後療法を組み合わせながら施術を行っていきます。

手術・投薬を行わないことから、柔道整復術の適用にはおのずと限界があります。適用外、業務範囲外のものについては、顧問医の先生や近隣の整形外科の先生に判断を仰ぎ、時には医師との連携のもと患者さんの利益を第一に考え、早期回復・早期社会復帰に万全を期します。

柔道整復術はそれを施すための心構えとして学校教育の場で次のように教育されます。

 ●損傷の発生機序を明らかにする

 ●組織損傷の業務範囲内・外を正確に鑑別して対処する

 ●正確な評価と指導管理を行う

 ●疼痛への配慮を十分に行う

 ●病態の分かりやすい解説を行い、患者さんが積極的に治療に参加する意識をもたせる

柔道整復術では検査データをみて患者さんの健康状態を把握することはできません。しかし患者さんの話し方や顔色、動き方や歩き方、立ち姿勢や座位姿勢、皮膚の色や感触などから情報を集め、患者さんと一対一で向き合い、お互いに協力をして障害部を克服・治癒に導いていく、人にとってやさしい治療手段と言えます。

柔道整復術は今後も時代の移り変わりと共にさらなる研鑽を積み、地域社会に寄り添い、より一層国民の健康増進に貢献していくものと考えております。

※柔道整復についてもっと詳しく知りたい方は

公益社団法人 東京都柔道整復師会のホームページもご覧ください。